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春になっても・・・ 作:越水 涼

 春になっても… 作:越水 涼 「私の心の限界が私の世界の限界である」とは誰が言った言葉だったろうか?ネットで紹介されていて自分がいいと思った言葉をメモしていた。三月の終わり、雨の中彼は、某地元企業の株主総会に出た。そして、名古屋で映画を観た。その映画の感想はさて置き、この三月も殆ど終わりに差し掛かったこんな日に何故だか休暇を取っていたのだった。  そして彼は、今日休んだことを半分は後悔している。欠員状態の課で、この時期に何故休むことにしたのだったか。「時給千円でこんな仕事やってられるか!」などと、彼の心の限界がそんな発想に繋がったのだ。彼が休んだことでの同僚のバタバタさ加減を想像できれば、今休暇を取るなんて考えは生まれない筈なのに。六月や七月にでもどばっと休めばいいじゃないか。自分が有休を消化したという事実を作りたかっただけなのだ。休んで使った八時間が明日の糧になったのか?仮になったとしても今日彼らに迷惑を掛けている、神経を擦り減らしている事実の方が巨大なのだ。弱く小さい彼は働いて得る給料よりも、働かずに得る給料を選択したのだ。今彼は同僚に対しては謝りたいと思っている。  彼にあるもう一方の、後悔とは反対の気持ちはこうだ。総会で株主が質問をした内容がよかったのだ。配当が少なく、恐らくそのために株価がもう何年も低迷している、何か株価を上げる手立てをどう考えているかという質問。もう一つ、人材登用についての具体的なことは何か考えているのかという質問だった。それに対しての会社の回答は一言で言えば「業績の結果が配当であり、株価であり、人材登用だ」と彼は取った。何だ、上場していても、自分の勤務先と変わらない意識なんじゃないか。具体的に何をやるのかがないと感じた。業績を上げるためには借金を増やしてでも、株主優待の充実や他社から実績のあるデジタル人材を取って来るとか、給料を上げて士気を向上させるとかが必要なんじゃないかと。もちろん日々の基本的なことの積み重ねが大事なのだが、そのためには人も増やさないと欠員状態ではいいアイデアも生まれないし、追われる仕事で疲弊していくだけなのだ。そして退職者が続出するという悪循環。彼の気持ちを代弁してくれた株主に心の中で彼は拍手を送っていた。  海洋散骨をしている主人公の映画を観た。死んだら例え殺人犯だった者だろうが、同じじゃないかと言った。でもそ

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