ときめきはあの空の下で(三) 作:越水 涼

 ときめきはあの空の下で(三) 作:越水 涼

 いま六十二歳の私が三十歳と二十九歳のこの子たちとはるか昔に遭遇していたかもしれないという話だ。

「そんなことある?」私はぶっちょう面で言った。

「トミダヤですよね?私たぶん保育園のころ親に連れられて行ったことありますよ。あの近くにその頃は住んでたので」すると二十九歳が言う。

「えっ、ほんとですか?私の家も近いですよ。トミダヤわかりますよ」

 私も結婚当初の三十一年前から五年の間、北方東口駅からほど近いアパートに住んでいたのだった。この同僚と三人で自己紹介をしていくうちこの偶然に気が付いたのだ。いや実際に遭ったり、すれ違ったりしたという証拠はもちろんないのだが、そんな”かもしれない”三人が毎日八時間近い時間をこの狭い空間で一緒に仕事するということに年甲斐もなく、最初私はときめいたのだった。

 加えての偶然はこうだ。二人ともに二人姉妹の長女。私には二人の娘がいる。三十歳の子とその妹とも私と私の長女とも同じ大学出身。私の次女と二十九歳の子の妹が高校で同級生で知り合いだった等々。

 えにしとは不思議なものだ。単なる偶然とはもう言えないと話していくうちに思ったものだ。この子たちとこの前は焼き肉を食べに行った。会社の繁忙期が近いから英気を養おうという意味合いだった。女性向けの上品な店で営業の男と四人で、仕事のことや最近の恋バナを話した。次回は私の三十年以上前の恋バナをする約束となった。

「そうそう、役場のそばの銭湯に当時何度か行ったよ」

「えー、私のおばあちゃんちがその近くなんですよ。私もその銭湯行ったことありますよ」

 ひょっとしたら、おばあさんに抱っこされた彼女と、私が番台を隔ててすれ違っていたか、顔を合わせていたかもしれないのだ。


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