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ノースリーブの女への手紙(弐) 作:越水 涼

 ノースリーブの女への手紙(弐) 作:越水 弐  仕事にかまけている間に、桜の季節も一瞬のうちに終わり、いまはその名の通り躑躅が僕の足を止めるように咲き誇っています。白やピンクや紫の花が本当にそこら中に咲いています。やっとこさ、そんなことに気付けるだけの心の余裕ができたということでしょう。三月の終わりからから今日まで、夢精をするくらいにストレスを抱えた日々でした。もちろん、心に引っかかることは仕事だけではなく、地域の行事のこと、古びた家の建造物のこと、家族のこと、自分の病気のこと…といろいろです。君は旦那さんと仲良くやっているだろうか?昔、今日は飲み会で帰って来ない、なんて話を聞いて、大丈夫なのか新婚なのにと思ってた。  君がいた時と変わらず、会社は迷走している。こんな給料の安い会社で人が入って来ないのに、退職の話が出てから募集をかけるなんて遅すぎるってことを何でわからないんだろうね?事務部門にこそ余裕があるくらいの人員を置いておくことで全社へのいろんなアイデアも出せるし、節約の方法や雑収入の確保もできるというのに。何十年欠員状態でやれというのだろう?  いや、こんな話がしたいんじゃないんだ。モノクロームの思い出に色を付けたいと思っただけなんだ。もう何年も、僕の見る世界に色がついてないんだ。気持ちのせいだとはわかっているんだけど。そういえば、昔話した映画の「八日目の蝉」観たよ。テレビでやってるのを録画して。母になりたかった女の苦しみと悲しみが、涙を誘うんだ。フェリー乗り場での”母”の叫び「その子はまだご飯を食べていません」が何度見ても心に刺さる。もう、誘拐犯じゃなくて母だと思えるんだ。  ごめん、今日はこれくらいにするよ。楽しいゴールデンウイークになるといいね!

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