エッセイ//私の道草日記 其の15 越水 涼

 2021.1.27

 夜のことです。私が風呂に入っていると聞こえてきました。「○○ちゃん、耳かきしよっか?」という妻の声です。二十歳の娘は未だに母親に耳かきをやってもらうのです。その様子を見て私も妻にやってくれないか、といつも言うのですが、「父さんの耳は汚いから嫌だ」と言いやってくれません。新婚時代はやってくれていたのです。うんやってくれていました。 

 やはり人にやってもらうのは少し怖くて顔をしかめながらですが、気持ちのいいものです。時に痛みが走りますが、「ドンマイ、ドンマイ」と言いながら、楽しい時間でした。そう、私もある時期まで母親に耳かきをやってもらっていました。でもせいぜいどうでしょう、中学生くらいまででしょうか?耳かきの最中のたわいのない会話が今思えば貴重な物でした。

 女親と娘の間では息子との間とのそれと違うものでしょうか?「○○ちゃん、耳かきしよっか」という私の母の耳かきは残念ですがもう永久にしてもらえません。

 私の妻の娘への「○○ちゃん、耳かきしよっか?」の声。いつまでも聞けるといいと思います。○○ちゃんという呼び方の卒業と耳かきの卒業、どちらが早いでしょうか?

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