初夏の前の感傷 作:越水 涼

 初夏の前の感傷 作:越水 涼

 夕刻、私はまだ仕事中だった。スマホの表示は登録のない番号。とりあえず出ずにいると、それは切れた。それから一時間後、再びスマホが鳴る。今度は出てみた。それはもうかれこれ二十年以上話したことのない従弟から電話だった。

                 ××××××××

 亡くなった叔父は私の母のすぐ下の弟であり、母の在所の長男であった。知らなかったが長く闘病生活だったと聞いた。葬儀の場で目を瞑って思うのはその故人と私とのつながりの記憶だ。今日の叔父であれば当たり前のことだが、私が生まれた時から何かしら世話になった筈である。母は六人きょうだいの長女だったが結婚は遅く在所の祖父母にとって、私は初孫ではなかった。しかし、生まれた時、正月や盆に遊びに行った時に勿論かわいがってくれたし、そこにいた叔父も同じだったと思う。古い白黒写真に叔父に抱っこされ、洟をたらした私の写真を見た記憶がある。その時々で呼び方も○○君と言う時もあれば○○と呼び捨てにする時もあった。くわしくは知らないが、若くして大工の仕事をしていた。確か自分の家も仕事に並行して建てたように記憶している。

 私が大人になってからも冠婚葬祭や家を建てる時にアドバイスをもらったこともあった。母が倒れた時にはすぐに駆けつけてくれ、見舞いにも頻繁に来てくれた。

 妙に覚えているのはその叔父が黄色い漬物でお茶漬けを食べる様だ。私がまだ小さい頃だと思う。他におかずもあった筈だがサラサラっとお茶漬けを啜っている。前歯に金歯。日焼けした顔。

「さよなら、叔父さん」

「○○、おっかさん大事にな」

「叔父さん、お孫さんすっごく泣いとったよ。ありがとうって言っとった。いいお爺さんやったんやね」

「そうやろ。孫二人とも美人やろ?」

「マスクしとったけど、そうなんやね。活発な感じなのはわかったよ」

「そう、そう。小さい時から何でも話してくれたわ。おれは幸せやったな」

 台風の影響で朝から凄い雨だったよ。これからは空から皆を見守ってね。叔父さん、さようなら。ありがとう。


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