エッセイ//私の道草日記 其の25 越水 涼

 2022.6.20

 久々のエッセイです。いつもの執筆スペースで会社帰りに書いています。今、ユーチューブを聞きながら書こうと思ってほんとに”ふと”「紙ふうせん」の「冬が来る前に」と検索して出て来たのがどうやら偶然にも私の家の近郊の人が撮ったのではではないかという映像がバックなのです。私も通学に使っていた走っていた頃の名鉄谷汲線の赤い電車と途中からは樽見鉄道の青い車両の走る映像なのです。こんな映像をバックに「冬が来る前に」とは。それは私が音楽ラジオ番組を聴き始めた頃のヒット曲です。

 ひと月程前、たまたま図書館の新刊コーナーで「三浦綾子」の「青い棘」という厚い本を手に取ったのでした。三浦綾子など多分高校生の時に読んだ「塩狩峠」以来でしたが借りて読み始めました。戦争体験者が多くいた時代の話で、男尊女卑の考えも残っている、今程核家族化が進んでいない時代の、私にとっては勝手にいい時代だと思っている頃の話です。主人公の女性とその義理の父との何とも言えない心の通い合うさまを軸に丁寧に描かれていて好ましい物語でした。義理の父の戦争の時代に亡くした先妻との記憶や戦時中に強制連行され強制労働させられて亡くなった中国人殉難碑を訪れた時に、人間は殺すためにも殺されるためにも生まれて来たのではない、私のおなかの赤ちゃんが生まれて来たら必ず人間は何のために生まれて来たのだろうと話し合おうと思う、と語るのです。瀬戸内寂聴がよく生誕百年と取り上げられていますが、三浦綾子も今年生誕百年なのですね。たまたま偶然目にして読み切ったこの作品、とても感動しました。

 思えば、偶然なんてほとんどすべてがそうなんじゃないかと思うのです。妻と出会ったのも、今の職場のメンバーに出会ったのも、娘たちに出会ったのも。そして八年前の七月に亡くなった父のもとに生まれてきた私の存在も。これから出合うすべての出来事や人や作品を偶然=縁として大切にして生きたいと思うのです。

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